小説を読もうとしてもなかなか進まない、小説を読みたいけどどれが読みやすいのかわからない、という方、いらっしゃいますよね。
初心者でも読みやすい小説というのは確かにあるのですが、小説のプロモーションは読書家に向けてなされることが多く、結局どれが読みやすいのかという情報はあまり出ていません。
そこで今回は、個人的に読みやすいと感じた小説をまとめてみました。
ぜひ参考にしてみてください。
読みやすい映像化小説

映像化されるということは、原作がそれだけ人気だった、ということです。何を読むか迷ったときは、とりあえず人気のある作品を選べば間違いないです。
先に映画やドラマを観てから原作を読む、という順番にしてみると、ある程度話を知っていることで、より読みやすくなるかもしれません。
『マスカレードホテル』
木村拓哉×長澤まさみの豪華キャストで実写映画化された、東野圭吾のミステリー小説。
ざっくり言うと、刑事の新田浩介がホテルマンに扮して連続殺人事件解決のために潜入捜査する話。山岸尚美が教育係として付いて、捜査に首を突っ込んだり突っ込まなかったりしながらストーリーが展開していきます。
この作品がおすすめな理由は、推理部分を見るとガチガチのミステリーなのに、とにかく軽く読めるから。単体でもおもしろいショートエピソードをサクサク楽しんでたら、気付けば終盤です。あれもこれも伏線で、全部きれいに回収して謎解きが行われます。
本格的な謎解きを、手軽に楽しめる、これぞ東野圭吾という作品です。

『謎解きはディナーのあとで』
櫻井翔×北川景子というこちらも豪華キャストで実写ドラマ&映画化された、東川篤哉のミステリー小説。
大財閥のお嬢様で国立署の刑事である宝生麗子が出会った事件を、執事の影山がさらっと解決していく話。影山がすごすぎて、お嬢様を誘導しながらの謎解きでも瞬殺できてしまうため、コメディタッチ強めで軽快に描かれています。
お嬢様から話を伝え聞いただけで犯人がわかってしまう影山と、執事はすぐわかったのに自分はわからずむかむかするお嬢様の掛け合いがユーモアたっぷり。「失礼ながら、お嬢様の目は節穴でございますか?」という執事とは思えないセリフを堂々と言ってのける影山の毒舌っぷりが病みつきになります。
一話完結タイプで六話収録なので、普段小説を読まない方にも取っつきやすい作品です。
『ハリー・ポッター』シリーズ
言わずもがな、全世界で4億冊以上売れている、J・Kローリングの大ヒットファンタジー小説。
ある日自分が魔法使いであることを知ったハリー・ポッターが、ホグワーツ魔法学校に通うことになり、友人と絆を深めたり、闇の勢力と対決したりしながら、成長していく物語。
映画は観たことあるしな、という方にこそ、原作の小説をおすすめしたいです。映画には映画の、小説には小説の良さがあり、映画と原作をどちらも体験することでハリー・ポッターという作品をより楽しむことができます。また、映画同様、小説もかなりボリューミーですが、映画で話を知っていれば苦なく読めるかと思います。
長編なので、まずは一作目の『ハリー・ポッターと賢者の石』から。ハードカバーはかなり大きいので、文庫版がおすすめです。
読みやすいミステリー小説

あくまで個人的な印象ですが、初心者の方でも読みやすい小説のジャンルは、ミステリーだと思います。
謎解きでスッキリできるし、わかりやすく起承転結もあります。また、「文学的な表現描写を楽しむ」みたいな、かっこつけた作品も多くありません。
軽快なミステリーであれば上で挙げた『マスカレードホテル』と『謎解きはディナーのあとで』がおすすめなので、ミステリーでも少し毛色の違う作品をご紹介します。
『仮面病棟』
医師であり小説家である知念実希人の、てんこ盛りミステリー小説。
外科医の速水秀悟が当直バイトをしていた療養型病院に、ピエロの仮面をつけた強盗犯がやってくるところから始まる話。自分で撃った女を治療しろという強盗犯の変わった要求に応じつつも、脱出を試みていくうちに、衝撃の秘密を知って―みたいなストーリーです。
脱出ミステリーに、リアリティ満載の医療サスペンスが加わる欲張りな作品。ただ、内容が重めなわりに、相当軽く読めます。最後の50ページまでは、面白くなるのか不安になるときもあるかもしれませんが、急に本気を出して結末まで持ってってくれるので、軽く読めることに免じて我慢してあげてください。
ラノベのような雰囲気を感じる作品で、あまり小説を読まない方でもさらさらと進めることができるかと思います。個人的には、続編的ポジションの時限病棟と螺旋の手術室がさらにおすすめなので、ぜひ。
『少女』
イヤミスの女王と呼ばれる湊かなえの長編ミステリー小説。
高校生の少女2人が、死の瞬間に立ち会いたいという思いで、お互いに秘密のままそれぞれ老人ホームと小児科病棟へボランティアをしに行くという、暗すぎるテーマの話。自殺した女子高生の遺書から始まるという、なんともイヤミスな冒頭ですが、始まってみると青春要素も強く、覚悟したほどは暗くならずに読み進められます。
無関係に思える2つのストーリーがパラレルに展開する形で物語が進んでいき、なのに最後まで読むとばっちりつながって実は伏線だらけだったことに気付く、湊かなえらしい作品。事件を謎解きしていくようないわゆるミステリーではありませんが、それでもミステリーと呼ばざるを得ないと、読後に思います。
普段全く本を読まなくても、湊かなえの作品だけは読むという人もいるほど、魅力的な物語を書く作家さんです。『告白』など、他の代表作もすべておすすめできます。

『屍人荘の殺人』
「このミステリーがすごい!2018」第1位を受賞した、今村昌弘の衝撃デビュー作であるミステリーホラー小説。
大学のミステリー愛好会の葉村譲と明智恭介が、同じ大学の探偵少女である剣崎比留子を連れて参加した映画研究部の夏合宿で、連続殺人が起きていく話。これだけ聞くとただの本格ミステリーみたいですが、奇抜な発想でパニックホラー要素を付け加え、しかも作品としてきれいにまとめられています。
密室での連続殺人×パニックというジャンルが、藤原竜也主演で映画化された『インシテミル』と似た雰囲気。ラノベっぽいと言われがちで、読書好きの中では極端に賛否が分かれる作品です。が、つまりは文体が軽かったり、内容が変化球だったりという意味で、初心者の方にはむしろおすすめです。
とはいえ「このミス」含め3冠を達成した小説で、しっかりと評価を得ています。一読の価値ありです。
その他の読みやすい小説

ミステリー以外で読みやすい小説だと、青春系、恋愛系が多いです。ファンタジーのように想像力をめいっぱい働かせる必要も、歴史物のように価値観の違いに違和感を覚えることも、それほどありません。
ただ、好き嫌いが分かれてしまいがちなのも事実です。
そこで、誰でも読みやすく、かつ受け入れやすい小説を2つ、ピックアップしました。
『夜のピクニック』
2005年の本屋大賞を受賞した、恩田陸の青春小説。
全校生徒が徹夜で80キロ歩く「歩行祭」で、3年間胸に秘めた想いをぶつけることを決めた貴子について描かれる話。ドストレートな青春物語で、ちゃっかり甘酸っぱい気持ちにしてくれます。
大人になると青春小説は敬遠されがちですが、心情を正確に言語化している叙情的な文章で、年齢を問わず引き込まれます。徹夜で高校生に80キロ歩かせるという意味の分からないイベントなのに、設定が違えば完成されなかったと思えてならない、不思議な物語です。
大人になって、ノスタルジーを感じながら読むのが最高で、普段青春ものを読まない方にこそぜひ読んでもらいたい作品です。
『きみはポラリス』
『舟を編む』の作者としても有名な三浦しをんの恋愛短編集。
王道ではなくても、それぞれにある恋の形をつぶさに描いていく、三浦しをんの本領が発揮されているような作品が11作収録されています。設定が複雑なものもあり、今回ご紹介している作品の中では好き嫌いがわかれる部類ではあります。ただ、短編集なので少しずつ読むこともでき、一度は読んでみてほしい作品です。
読みやすいとはいえ文学的な表現も多少あるので、どちらかと言えば、小説に慣れてきたという方におすすめです。

まとめ
映像化された作品、ミステリー作品、青春もの・恋愛もの作品にわけて、読みやすい小説をご紹介しました。
小説は、数えきれないほどの作品が世に出ていて、一度楽しさがわかれば一生の趣味になります。
ですが、もちろん合う合わないはあります。たまたま手に取ったものが合わなかったからと言って止めずに、ぜひ小説の良さを知っていただければと思います。
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